会津美里町高田では江戸時代から続く「虫送り」が今も受け継がれています。
一般的に虫送りというと、松明(たいまつ)を手に田んぼの畦道を歩き、害虫駆除と豊作を祈念するという方式が一般的のようですが、高橋の虫送りは 宮川を挟んで東側と、西側の地区でそれぞれ虫籠を作り、子どもたちが行列を作って高橋まで虫籠を運んで、供養し、籠ごと川に流すというものです。
虫籠といっても、時代劇に出てくる「かご」のような大きなものです。
7月19日は朝のうちに材料を取りに山に入り、稲荷神社のお社で、蚊取り線香を焚きながら作業するのは西側の冑地区の虫籠です。
木組の上に萱を葺[ふ]き、さらに朴[ほお]の葉を重ねていく作業をします。

 

東側の尾岐窪地区の虫籠は7月に入ると、星清俉さんが中心になって時間と手間をかけて作ります。くるみの木を芯に組んだ周囲に、繊細な細工を施します。材料は桑の枝、桑の葉、藤ツルや皮、竹などで、こちらも地元で調達します。

冑地区の籠は素朴で力強く、尾岐窪地区のそれは優美。ゆえに前者を男籠、後者を女籠とも呼ばれています。どちらの籠にもフキの葉で包まれた虫を入れてあります。

益虫か害虫かは人間のモノサシ。虫だって生態系の一部です。

殺生することへの罪悪感や、これ以上虫が増えないように祈る気持ち、駆除するのではなく、手厚く供養して虫を「送る」この風習は、日本人ならではの、自然へ畏敬の念が感じられます。

 

 

虫送り保存会が製作したスライドショーをご覧ください。